SoCとはなにか?特徴や用途、メリット・デメリットを徹底解説
スマホに関する記事や情報を見ていると、SoCの文字を目にした。SoCとはどういう意味か気になる方もいるのではないでしょうか。
スマホをはじめとした電子機器を知るうえで、内部構造に関する知識があるとより深い理解に役立ちます。本記事ではSoCをさまざまな観点から取り上げ、詳しく解説していきます。
SoCとは動作に必要な機能を1つの半導体チップにまとめる方式
SoC(エスオーシー、ソック)とは、システムや機器の動作に必要な機能を1つの半導体にまとめる方式を指します。略する前の用語として「System on Chip」(システムオンチップ)も使われており、SoCの意味を端的に示しています。
ここからはSoCに含まれる機能やSoCの種類、よく比較されるSiPとの違いを取り上げ、解説を進めます。
SoCに含まれる機能
SoCには以下のとおり、さまざまな機能が含まれています。
機能 | 項目の詳細 |
---|---|
CPU | |
メモリ | フラッシュメモリ、SRAM、DRAM |
ストレージインターフェース | |
GPU | 3Dグラフィックスを描くために必要 |
DSP | アナログ信号をデジタル信号に変換する |
NPU | AIの処理を行う |
I/O | |
USB | |
MIPIインターフェース | カメラと接続する |
通信機能 | Bluetooth、Wi-Fi、LTEモデム、イーサネットなど |
どの機器にも、上記に挙げたすべての機能が搭載されているとは限りません。たとえば、USB端子のないスマートフォンやタブレットは存在します。しかし1枚の半導体チップに、上記に挙げた機能が凝縮されていることは特徴的といえるでしょう。
SoCは2種類に分かれる
SoCは目的や用途により、以下の2種類に分かれます。
- CSoC
- PSoC
それぞれの特徴を、順に確認していきましょう。
CSoC
CSoC(Configurable System on Chip)は汎用品のSoCであり、量産化によりコストを抑えて製造できる半導体チップです。「特定用途向け標準製品」(ASSP)であるため、事前にスペックを見た上で発注し、入手することが可能です。
CSoCは、以下に挙げる特徴を持っています。
- 機器製造事業者や利用者が使い得る機能を一通り搭載する
- どの機能を使うかは、機器製造事業者やユーザーがある程度選べる
- 搭載されている機能をフルに活用する用途には向かない
CSoCはコストパフォーマンスが求められる、多くの方が求める価格帯の商品に向いています。
PSoC
PSoCは「Programmable System on Chip」という名称のとおり、後から組み替え可能なことが特徴です。これにより多数のユーザー・モジュールのなかから、適した機能を選んで活用できます。CSoCでは満たせない要件をPSoCで得ることも可能です。
PSoCが持つもう1つの特徴は、デジタル回路だけでなくアナログ回路も持つ点です。これにより、本来ならば外付けで用意しなければならない回路をSoC内部に持たせることが可能。高い性能と省スペースを両立できます。
SiPとの違い
SoCとよく比較される用語に、SiP(システムインパッケージ)があります。「複数の機能を1つのチップにまとめる」という点では、SoCとSiPの違いはありません。しかしSoCとは、以下の点に違いがあります。
- SoCと異なり、1つのチップにまとめることにこだわる必要がない
- 求める性能に応じて、SiPの組み合わせを変えられる
たとえば「CPUは同じで、搭載するメモリの量はオーダーによって変える」といった製品の場合は、SiPで行うと簡単です。SiPならば以下の組み合わせをあらかじめ作っておき、オーダーにあわせて組めばよいためです。
- CPUを中心としたSiP
- メモリを中心としたSiP
また「CPUとメモリの大きさが異なるが、うまく配置したい」「なるべく低コストを追求したい」といった要望にこたえることも、SiPを選ぶことで実現できます。
一方で「出荷する製品の仕様を統一し、カスタマイズやバリエーションは設けない」場合は、SoCのほうが効率的です。
SoCが使われる機器は多種多様
SoCは、さまざまな機器の部品として使われています。代表的な機器を、以下に挙げました。
- デジタル機器(スマートフォン、タブレット、携帯電話など)
- 映像・音響機器(テレビやレコーダー、オーディオ機器など)
- ゲーム機
- 家電
- 自動車、バイク
- 商用・産業用機器(医療機器や測定機器など)
SoCは日々の生活はもちろん、社会を支えるうえで重要な役割を担っています。
SoCはスマートフォンをはじめ、さまざまな機器の部品として利用されています。
SoCを使う4つのメリット
SoCの活用により、4つのメリットが得られます。それぞれの項目について、SoCの有効性を確認していきましょう。
その1:機器の小型化・軽量化と、性能の両立が可能
SoCは小型ですが、1個のなかに多くの機能を詰め込んでいます。複数のICチップを組み合わせる必要がないため、基盤や機器の小型化が可能。スマートフォンなど小型で軽い機器でも、十分な機能を搭載できます。
その2:高速化とパフォーマンスの向上が可能
一般的な電子回路において、ICチップ間の通信は「ICパッド」と呼ばれる外部端子を経由して行われます。一方でSoCでは機能が1つのチップにまとまっているため、ICパッド経由よりも高速な「内部バス」を使った通信が可能。処理の高速化とパフォーマンスの向上を実現できます。
その3:電力消費量や発熱量を抑制し、ランニングコストの削減につながる
多くの部品をSoCにまとめることは、電力消費量や発熱量の削減にも好都合です。ICチップ間の電流がなくなるぶん、消費する電力や発熱は減少。省エネに貢献するとともに、ランニングコストの抑制にもつながります。特にバッテリーで動作する、スマートフォンやタブレットに有効です。
その4:機器の開発・製造コストを削減できる
SoCは「機能がワンセットにまとまって提供される製品」という特徴もあります。複数の種類のICチップを調達し自社でつなぐ場合と比べて、SoCを活用する場合はいくつかのテストを削減可能。ミスをしやすいポイントも減らせるため、SoCの活用により機器の開発や製造コストを削減できます。
SoCを使う2つのデメリット
メリットの多いSoCですが、もちろんデメリットもあります。ここからは2つのデメリットを確認していきましょう。
高電圧と低電圧の回路をまとめにくい
設計によっては、電圧の異なる回路を設ける場合があります。これらは混在しないよう、しっかり分けなければなりません。一方で回路を分ける難易度は、収納すべきスペースが小さくなるほどアップします。
このような理由から、SoC 1個に高電圧と低電圧の回路を問題なく含めることは困難です。高電圧用のチップと低電圧のチップを分けることになるでしょう。
選べる構成には制約がある
SoCは、メーカーがあらかじめ用意した構成や機能からしか選べないという制約があります。特にCSoCは汎用品であるため、コストを意識した設計は欠かせません。最高レベルの組み合わせを選びにくいことを、デメリットに挙げる方もいるでしょう。加えてSoCは、気軽に受注生産するわけにもいきません。
このため、機能にこだわりがある方の要望には100%こたえにくいことも難点に挙げられます。
SoCを製造する主なメーカー
SoCは、さまざまなメーカーから提供されています。たとえばスマートフォン向けのSoCは、以下のメーカーが主流です。
- MediaTek(代表的なSoC:Dimensity、Helio)
- Qualcomm(代表的なSoC:Snapdragon)
- アップル(代表的なSoC:Appleシリコン)
- Hisilicon(代表的なSoC:Kirin)
- UNISOC(代表的なSoC:Tanggula)
- サムスン(代表的なSoC:Exypnos)
もちろんSoCは、スマートフォン以外の機器にも使われています。主なメーカーを、以下に挙げました。
- ソシオネクスト
- ザイリンクス
- インテル
- Cypress Semiconductor
- Efinix
- Marvell Technology
- Nordic Semiconductor
- NXP Semiconductors
- QBit Semiconductor
SoCの価格は多種多様
SoCの価格は製品により大きく異なりますが、1個2,000円以内で調達可能な製品が多くなっています。なかには300円程度で購入可能な製品もある一方で、数千円から数十万円といった高価なSoCも存在します。
SoCは電子機器の小型化に大きく貢献する技術
SoCは複数のICチップを統合し小型化することで、スマートフォンなど電子機器の小型化に大きく貢献した技術です。もしSoCが無ければ小型サイズのスマートフォンやモバイルWi-Fiは世に現れず、機能も制限されていた可能性があります。片手で手軽に使える機器が当たり前に使える裏側には、SoCのような目覚ましい技術の進歩があったわけです。
技術の進歩は、これからも進むことが期待されます。SoCがニュースになった際には目を通し、進化した内容を確認してみてはいかがでしょうか。
おすすめの関連記事
↓iPhoneを安く買う方法は?↓iPhone SE(第3世代)値段比較↓iPhone13値段比較この記事を書いた人
- INEST株式会社とINESTグループ企業のLinklet株式会社が共同運営しているスマホの先生の運用チームです。スマホやスマホプランやキャンペーンなどについて記事を執筆しています。